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2010年12月22日

映画:武士の家計簿

12月5日、カミさんとむさしのミュウに「武士の家計簿」を観に行った。
 
ポスターや劇場予告編を見て、観たいと言い出したのは小生なのだが、観てみて、カミさんも気に入った様であった。

幕末期、加賀藩(現在の金沢)に、ひとりの「そろばん侍」がいた。
名を、猪山直之という。
原作は、実在したこの男が克明に記帳していた家計簿から再現された歴史研究書である。

映画は、冒頭、幕末の騒乱も人々の記憶から薄れた、明治7年頃の東京、直之(堺雅人)の息子の成之(伊藤祐輝)の独白から始まる。
まだ創立間もない帝国海軍の、主計監(現在で云えば海幕主計課長)である彼が、金沢の実家から送って来た、家計簿の写しを受け取って、呟くのだ。 「父は目を通せと云って来ているが、見る必要など無い。父が間違うはずなど無いのだ。私にとっては、父は加賀一の、いや、日本一のそろばん侍なのだから…」
武士が事務処理能力を誇るのは、ある意味自虐なのだが、成之はもう武士ではない。彼は正直に父親を誇ったのだ。
父・直之は加賀藩の会計係である「御算用者」でも屈指の存在であったし、大抜擢により「御用取次役」(藩主の秘書)になってからも、藩主(前田斉泰=利家から数えて12代目の加賀前田氏当主でもある)の側近として精勤したが、裏を返せばただ真面目なだけの「そろばん馬鹿」で、武芸はからっきしだった。若い頃の成之はそんな父を誇れず、戊辰戦争従軍に志願したりして、かなり無茶をしたが、幼少時から父に仕込まれた会計能力を見込まれ、官軍の補給担当参謀に引き抜かれた時、初めて自分の能力を知る事になるのだ。そして、父の仕込みが正しかった事も。
ストーリーそのものは、直之が元服して父・信之(中村雅俊)と共に登城し、御算用者見習として働き始めたところから、始まる。
猪山家の家計逼迫の露見から、徹底した倹約と家財の処分が始まるのだが、やはり家風というのはあるものなのだな、と思わせる演出だ。信之が直之に、「これは良いであろう」と売るのを思い止まるよう説得した、藩主正室からの下され物の茶碗を、最終的には信之は、骨董屋に自ら交渉して高値で売り払ってしまうのだ。実質的に家督を、結婚した直之に譲った後とは云え、武士たる者の魂である、手持ちで最も良い刀だった、普段差しの脇差まで売ってしまった。(登城時に帯びる大小は最低限の物として、残したが)直之の母・常(松坂慶子)が、直之に説得され、質素な生活に馴染もうとする姿にも、それが看て取れる。豪華な長煙管(きせる)と煙草盆を売ってしまい、町人が使う様な小さな(外出用だったのかも知れないが)煙管と安物の湯呑を流用した煙草盆で煙草を吹かしすシーンが、印象的だった。

総じて時代劇の姿を借りた年代記風ホームドラマなのだが、もう一面として、猪山直之という男の一代記でもある。

後半、京都に出発する成之に、直之が言って聞かせる言葉が、印象的だ。
「お前は、何がしたい? 儂は、したい事をして生きておるぞ」
若い成之はそれに対し、反発はしても的確に反論する事は出来なかった。

永く記憶に残るだろう、いい映画であった。

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Posted by 壇那院 at 23:51│Comments(0)雑感/映画
 
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