2006年11月23日
映画:ベルナのしっぽ
原作はかなり有名な同名のノンフィクションなのだが、小生は読んでいない。
盲導犬ベルナとそのパートナー家族の物語なのだが、時代背景は1983年からの10年程。
都心で暮らしていた上、近所に身障者センタがある土地柄だったせいか、小生はその時代から盲導犬というものには、小学校高学年の頃から基礎知識程度はあったのだが、どうもまだ、盲導犬に代表される介助犬(パートナードッグ)についての世間の理解は、その小学生より劣っており、かつ10年遅れていたらしい。
劇中、向こう気が強いせいもあり、主人公は盲導犬への社会の無理解に真っ向から突っ込んでいく姿が描かれているが、小生にはその様子に、云わば「後ろ向きの驚き」があったのである。
終盤近く、介助犬を使う人が必ずぶつかるジレンマに、主人公もぶつかる。観ているこちらにも、判断がつかない問題だった。「パートナーの引退」である。警察犬などでもそうだが、犬がまともに働ける期間は意外に短かい。せいぜい10年程度である。(考えようによっては、人間は80年生きるとしてその内40年程度が現役期間なのに対して、15年程度の寿命の犬は比率としては大きいとも云えるが…)
家族同然に生活してきた盲導犬を、老いたからといってリタイアさせ、別の家に余生を預けさせられるのか…。
実際、たいがいの場合、引退した犬を、新しい盲導犬と共にペットとして飼い続けることは無い。パートナーと一緒にいる限り、犬は介助しようとするからだ。(劇中で、主人公はそれをベルナのプライドと解釈していた)
リタイアとは、犬を手元から手放す事を意味するのである。
介助犬の問題は、パートナーとなる人間にも、ある覚悟を要求するところにもある、ということだ。
映画の中で表された、主人公の解法が、唯一のものではないことは、理解しておくべきだろう。
色々考えさせられる、いい映画であった。
盲導犬ベルナとそのパートナー家族の物語なのだが、時代背景は1983年からの10年程。
都心で暮らしていた上、近所に身障者センタがある土地柄だったせいか、小生はその時代から盲導犬というものには、小学校高学年の頃から基礎知識程度はあったのだが、どうもまだ、盲導犬に代表される介助犬(パートナードッグ)についての世間の理解は、その小学生より劣っており、かつ10年遅れていたらしい。
劇中、向こう気が強いせいもあり、主人公は盲導犬への社会の無理解に真っ向から突っ込んでいく姿が描かれているが、小生にはその様子に、云わば「後ろ向きの驚き」があったのである。
終盤近く、介助犬を使う人が必ずぶつかるジレンマに、主人公もぶつかる。観ているこちらにも、判断がつかない問題だった。「パートナーの引退」である。警察犬などでもそうだが、犬がまともに働ける期間は意外に短かい。せいぜい10年程度である。(考えようによっては、人間は80年生きるとしてその内40年程度が現役期間なのに対して、15年程度の寿命の犬は比率としては大きいとも云えるが…)
家族同然に生活してきた盲導犬を、老いたからといってリタイアさせ、別の家に余生を預けさせられるのか…。
実際、たいがいの場合、引退した犬を、新しい盲導犬と共にペットとして飼い続けることは無い。パートナーと一緒にいる限り、犬は介助しようとするからだ。(劇中で、主人公はそれをベルナのプライドと解釈していた)
リタイアとは、犬を手元から手放す事を意味するのである。
介助犬の問題は、パートナーとなる人間にも、ある覚悟を要求するところにもある、ということだ。
映画の中で表された、主人公の解法が、唯一のものではないことは、理解しておくべきだろう。
色々考えさせられる、いい映画であった。
Posted by 壇那院 at 22:23│Comments(8)
│雑感/映画
この記事へのコメント
うちの市では盲導犬、介助犬の普及に力を入れているらしく、そこここでいろいろな話しを聞く機会があるんですょ。
ある意味道具として使ってるわけですが、道具とは言えないですしねぇ・・・そーゆー点では割り切れないものはありますね。
美談だけではないことも沢山あるようです。現状大変に不足して、申請してもなかなか手元にこないようです。この映画が普及の一端を担ってくれればいいなって思います。
ある意味道具として使ってるわけですが、道具とは言えないですしねぇ・・・そーゆー点では割り切れないものはありますね。
美談だけではないことも沢山あるようです。現状大変に不足して、申請してもなかなか手元にこないようです。この映画が普及の一端を担ってくれればいいなって思います。
Posted by きょろ at 2006年11月23日 23:15
きょろさん
もっと大々的にいろんなヒトに見てもらいたい映画ですが、上映館少ないンだよねぇ。
もっと大々的にいろんなヒトに見てもらいたい映画ですが、上映館少ないンだよねぇ。
Posted by 壇那院 at 2006年11月24日 00:05
引退の件は、私はまったく考えたことがなかったです。
そういう現実の問題があるんですね。
そういう現実の問題があるんですね。
Posted by manbow at 2006年11月24日 02:17
まんぼうさん
介助用の動物って、利口ですが、だいたい人間より短命です。
そうじゃないのは、象くらいでしょう。象を介助犬がわりにするには大きすぎですよね。
この問題は、パートナー・アニマルには必ず付き纏いますよ。アイメイト協会では、だからリタイア犬の受け入れ先(里親)の確保もしているし、今も募集しています。云ってみれば、犬の養老院ですね。
介助用の動物って、利口ですが、だいたい人間より短命です。
そうじゃないのは、象くらいでしょう。象を介助犬がわりにするには大きすぎですよね。
この問題は、パートナー・アニマルには必ず付き纏いますよ。アイメイト協会では、だからリタイア犬の受け入れ先(里親)の確保もしているし、今も募集しています。云ってみれば、犬の養老院ですね。
Posted by 壇那院 at 2006年11月24日 23:21
ハチ公もそうですが,この手の奴は悲しくなってしまって見れません...(T_T) 別れとか,死とか...
Posted by Ritchie at 2006年11月25日 05:54
別れがある映画はつらいですよねー。
涙もろいので困ります。
涙もろいので困ります。
Posted by Nezu at 2006年11月25日 17:16
以前、TVで同じような問題を取り上げたドキュメンタリー番組をやっていました。
介助を必要とする人も、初めに介助してくれたパートナーに対しては思い入れも大きく、新しく来る犬に対して、どうしても「前の犬と比較しちゃう」という心理があるのだということでした。
運命共同体のようにして、何年も暮らしてきたわけですから・・・。
簡単にリタイアを受け入れることもできず、簡単に別の犬を有り難がるってことも難しいようでした。
あと、犬を盲導犬として一人前にするように訓練している人も、やっぱりツライ別れを何度も経験していると言っていました。
仕事だと割り切っていても、そこは動物同士・・・。
割り切れないことなんて、いくらでもありますよね。
引退したトレーナーが、盲導犬の里親になるケースもけっこうあるようで、かつて自分が訓練した犬を、だいじそうに飼っている姿も映されていました。
その番組を見るまで、あんまり関心なかったのですけれど、色々考えさせられるようになりました。
きっと、この映画も、一般の人がなかなか知ることのできない部分にスポットを当てているのでしょうねぇ。
介助を必要とする人も、初めに介助してくれたパートナーに対しては思い入れも大きく、新しく来る犬に対して、どうしても「前の犬と比較しちゃう」という心理があるのだということでした。
運命共同体のようにして、何年も暮らしてきたわけですから・・・。
簡単にリタイアを受け入れることもできず、簡単に別の犬を有り難がるってことも難しいようでした。
あと、犬を盲導犬として一人前にするように訓練している人も、やっぱりツライ別れを何度も経験していると言っていました。
仕事だと割り切っていても、そこは動物同士・・・。
割り切れないことなんて、いくらでもありますよね。
引退したトレーナーが、盲導犬の里親になるケースもけっこうあるようで、かつて自分が訓練した犬を、だいじそうに飼っている姿も映されていました。
その番組を見るまで、あんまり関心なかったのですけれど、色々考えさせられるようになりました。
きっと、この映画も、一般の人がなかなか知ることのできない部分にスポットを当てているのでしょうねぇ。
Posted by 吟遊詩人 at 2006年11月25日 21:20
コメントありがとさんです
Ritchieさん
観てて、泣く前に考え込んじゃいましたよ。
NEZUさん
考え込んだ後、泣くような問題じゃないと思いました。
お吟さん
実際、相手が「人類最初の友」ですからねぇ。どんなにシステマティックに考えても、この問題だけは感傷的になってしまうでしょう。こっちも人間ですかな、どこまで行っても正解が無い問題ではあります。
Ritchieさん
観てて、泣く前に考え込んじゃいましたよ。
NEZUさん
考え込んだ後、泣くような問題じゃないと思いました。
お吟さん
実際、相手が「人類最初の友」ですからねぇ。どんなにシステマティックに考えても、この問題だけは感傷的になってしまうでしょう。こっちも人間ですかな、どこまで行っても正解が無い問題ではあります。
Posted by 壇那院 at 2006年11月26日 00:21