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2007年01月13日

もう、帰って来ても

そろそろ1年になるが、去年の1月まで、我が家にはうさぎがいた。
生涯のほとんどをケージに入れずに、家の中で放し飼いになっていたこの白いミニ(?)ウサギ、名を、ミルクと云う。
ある意味、我が家の主(ぬし)であった。
 
外勤先の電機メーカで大残業の連続だった1月31日の午前、カミさんから1本携帯メールが入った。
『ミルク死んでた』
朝、出勤間際にミルクの姿を見たかどうか、憶えていない。

半月程前から排便の調子が悪く、粘膜が混じった光る便を出す事がたまにあり、尻の締まりもなくなったのか、トイレ以外でも点々と糞を見るようになっていた。
カミさんが医者に連れて行ったが、栄養価の高い物を喰わせて様子を見るしか無くなっていた。

その後の仕事で何を設計したのか、意識が無かった。3日程して、データファイルのチェックをしていて再発見したくらいだ。
昼飯は何を喰ったか、午後になったら忘れていた。
午後の仕事も、いつもの半分以下の能率だっただろう。
その日は、前日までと違って20時には仕事を強引に切り上げて帰宅したと思う。
泣いている末っ娘と、痩せ我慢して仏頂面している2人の息子の顔が、脳裏に浮かんでは消えていた。
早く帰らなければ。
だが、足の運びは、頭の回転同様にひどく鈍かった。
外勤先から駅までのバスに乗り込む時、ステップに掛ける足がやけに重く感じたのだけは、はっきり憶えている。

家の玄関をくぐっても、真っ先に足許にすり寄って来る白い毛皮の塊は、もういないのだ。

立川駅までカミさんに迎えに来てもらったドミンゴに乗り込みながら、表現しようの無い寂しさを感じていた。
帰宅して、小生の座机の上の、バスタオルにくるまれた死体を見て、即席の線香台を作った。
前年の秋に祖母の墓参りに行った時の、線香の余りに火を点ける。

遅くに布団に入ってから、自分のまわりを走り回る気配の無さに、泪は出なかったが、いつの間にか枕元の足音を待っている自分を押し殺して寝た。

翌朝、早く目が覚めたが、枕元で静かに「おとーさん」が起きるのを待っている鼻息の音は、もう聞こえない。
焦れて目玉を舐めに来る白うさぎは、もういないのだ。

その日に帰宅した時には、死体は埋葬に回されているはずだ。
最後に一目死に顔を見てから、出勤した。

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この記事へのコメント
会ったことも無いミルクちゃんが壇那院さんに擦り寄る様子を
ちょっと追い浮かべました。
ペットって家族同然の存在だから居なくなってから存在の大きさに気付かされますよね。
昔ウチで飼ってた犬や文鳥のことを思い出しました。
Posted by Hide at 2007年01月13日 23:52
Hideさん
入れ違いですね。
この回、書くのに時間がかかりました。思い出すと、まだちょっと気が重くなるんですよね。
あと、2回です。
Posted by 壇那院 at 2007年01月14日 00:04
ペットを飼っていて唯一このときが嫌なんですよね.
うちの猫のことを思い出しました.
Posted by Ritchie at 2007年01月14日 05:22
Ritchieさん
そうですね。
実家のお袋は、それが理由でペットを飼いたがりません。
自分のペットは小生が物心ついて以来、金魚ですら飼ってませんから、本気です。
小生が実家にいた頃飼ってた犬は妹のでした。
その犬が死んだ直後に実家が引っ越したんですが、引っ越した先の伊豆では、飼ってたのは親父の金魚くらいでした。情が移りやすい高等動物は、ほんとに駄目なんですよね。

息子の小生の方は、性懲りが無いんでしょうなぁ。
Posted by 壇那院 at 2007年01月15日 01:19
うん、どうしたって人より先に逝ってしまうとわかっていても、悲しいし寂しい事です。
ちっと泣いちゃった(T^T)
Posted by きょろ at 2007年01月15日 02:44
泣くな泣くな こんどはカミサンに目を舐めてもらえおとーさん。
Posted by ぴこどん at 2007年01月15日 11:32
もういっぺん飼うのがいいのかも
とよく思います。ネット仲間で最近、愛猫を
亡くした方は,他へ嫁いだ娘さんに「かわいい
子猫を飼いませんか?」なんて言われて。また
飼い始めました。もうでれでれですわ。
まさに溺愛という言葉がぴったりです。

我が家、事故で愛猫を亡くしましたが、その
数日前から来ていた子猫が、今は私を癒してくれて
います。めちゃめちゃな暴れん坊で、前の猫の
おしとやかさとは対極にあります。でも、子の子を
飼ってホント、良かったと思っています。明日は、
彼の去勢手術の日です。麻酔が切れたら
痛がるでしょう。この医者、とんぷくを
出さないですから。憂鬱です。

旦那院さん、もう一度、うさちゃん、飼ってみる
気があるのでは?
Posted by スー at 2007年01月15日 21:41
コメントありがとさんです

きょろさん
こればっかりはどうにもなりませんよね。
その覚悟が無ければ動物は飼えませんよ。

ぴこどん
カミさんは目玉は舐めてくれません! キスしてくれるのです。(えへへ)

スーさん
仰る通り、飼うつもりです。31日の一周忌を区切りと思ってるんですよ。
すぐ飼うとミルクと比べちゃいそうですから、1年の間を開けました。
Posted by 壇那院 at 2007年01月16日 00:12
へー あー そぉー 

証拠の画像 よろしくぅ!
Posted by ぴこどん at 2007年01月16日 05:09
子どもたちが犬や猫を飼いたがっているんだけど
どうしても人間より早く逝くからためらってしまいます。
きっと楽しい時を過ごせるとは思うんですけどね。

わたしは亀を飼いたいです。
わたしより長生きしそうだし。
Posted by あっちゃん。 at 2007年01月16日 20:53
コメントありがとさんです

ぴこどん
そんなもったいないコトはしません。小生とカミさんだけの秘密なのだァ!

あっちゃんさん
イシガメでも寿命は30年いかないよ。ゾウガメの類だったら途轍もなく長生きするけど、こいつらは3代に渡って飼う覚悟がいるよ?
それから、一般的に爬虫類は死ぬまで成長するから、長生きすればそれだけ大きくなる事を忘れずにね。
まぁ、2月のエントリを読んでから考えてよ。
ちなみに、まだエントリにしてないけど、うちには亀もいるのです。12才のミドリガメのカメックスが。餌をセーブして小さく育ててるけど、それでも甲羅のサイズは25センチを越えてる。冬越しの室内水槽は市販の最大サイズだよ。
Posted by 壇那院 at 2007年01月17日 00:01
保健所からまだ乳離れもしていない犬を貰ってきて。
犬用のミルクから育てたのを6年前になくしてから、未だに飼う気がしません。
自分を”人間”と思い込んでるような犬でして。
息子ふたりを自分よりも下、自分が”長男”と思ってたみたいでしたよ。
実家の父が急死して急遽ペットショップに預けたのですが。
そこでウィルス性の病気を貰ったようです。
父を亡くして2週間も経たないうちに犬が死んで。。。ダブルショックでした。
いま思い出しても面白くて可愛い犬でした。
息子たちに「鬼の目に涙」と笑われましたが鼻水垂らしながら大泣きしました(笑)
ペットは居なくなってからも”家族”ですよね。
Posted by ari at 2007年01月17日 00:48
ariさん
そういった育て方した子では思い入れなんてものではなかったでしょう。
動物としての種類にもよるし、その子の性格にもよるでしょう。家族としての入り込み方によって、死んだ時のショックの度合いも色合いも違うでしょうからね。
小生は、これでキリをつけるつもりです。
そのために、この思い出話をUPしていたようなものですから。
Posted by 壇那院 at 2007年01月17日 01:11
 
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