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2006年10月12日

追い詰めすぎると…

かの国がまたやってくれた。
今度は地下核実験だそうだ。
詳細はまだ解析中と考えて良い状況で、やれ長崎型の10倍程度だの、不完全起爆で核反応は中途半端だったらしいだの、情報が錯綜している段階であるから、かの国の核兵器開発技術のレベルを判断することなど、出来ない。
 
が、国連と合衆国、我が国などが反応としてやろうとしている事に、ちょっと疑問がある。

本当に経済制裁・軍事的制裁をやって、将軍閣下が黙って云うことを聞くと思っているのか、という点だ。
特に新任の我等が首相、単独制裁に出て、あの将軍閣下がキレてノドンを発射しないという確信があるのだろうか?
約65年前、今コンビを組んでいる合衆国が、同じ手口で我が国を無自覚に追い詰めて、あの戦争を誘発させた時と、状況が似ているとは考えていないのだろうか?

前回、このカテゴリで書いたが、小生はかの国のミサイル技術では、ノドンは充分実戦配備レベルであり、かつ実際に複数実戦配備されているはずで、実際的な軍事的脅威はテポドンよりノドンであると考えている。
調べてみた限りではノドンの有効射程は1300km以上。資料によっては1200kgの弾頭搭載で1350km、700kgに弾頭質量を減らすと1500km飛ぶとしている。小さめの見積りでは、750kg弾頭で射程1300kmだ。
配備数は200発というのが大方の推定値になっている。

では、トサカにキた将軍閣下が日本と韓国にミサイルをぶっ放したとしよう。
この場合、700発配備されているとされるスカッドBは日本に届かないから、韓国向けでしか使えないし、日本のみ攻撃するのなら韓国軍と在韓米軍は動かないだろうという、ちょっと非現実的な読みを将軍閣下と彼の取り巻き連中がした場合、200発のノドンは総て日本に向けられることになる。

推定されているノドンの性能の中で、CEP(半数必中半径)が1500m以上というのがある。その意味するところは、10発発射したミサイルのうち、設定した目標に対して5発が半径1500mの円内に着弾し、残り5発はまるであさっての場所に着弾する、という意味である。これが銃弾や砲弾なら、CEPが1500mなら統計的に80%必中半径は2500m程度になる、と云えるのだが、誘導装置の不調などの要素が入り込むミサイルの場合、ほんとに残り5発はどこに着弾するか判らない。そのため、あまりトンでもない方向に飛んでいることが判った場合の指令自爆装置、又は燃料切れ時の自動自爆装置は、ミサイルの標準装備である。
さて、半径1500mというのは、東京の場合、国会議事堂を目標にして10発発射すると、5発が東は日本橋、西は赤坂離宮、北は飯田橋駅、南は東京タワーまでの範囲の「どこか」に落ちるということだ。
仮に80%必中半径を5000mとしよう。(残り2割は不発と考えてもいいだろう)東は荒川河川敷、西は新宿副都心や明治神宮、北は巣鴨、南は品川・天王洲あたりまでが範囲になる。
これが普通の炸裂弾頭(HE)だとしても、直径20m、深さ7m程度のクレーターが瞬時に出来る理屈で、天から音も無く(突入速度が超音速だから当然だが、弾道ミサイルは、偶然目視でもしない限り、まったく唐突に着弾する)死は降って来るのである。

で、こういった兵器にはさらに、弾頭の威力半径というスペックもある。前述した通りHE弾頭なら対構築物で10m程度、爆風や破片・吹き飛ばした土砂などでの対人殺傷半径なら、ひらけた場所で80m程度にはなる。建て込んだ市街地でも30mは確実だ。
これが15キロトン級の核弾頭だったらどうだろうか。だいたい広島・長崎の爆弾と同等の威力ということになり、対人殺傷半径は2kmを超えることになる。
CEPが1500mと粗くても、お釣りが来る計算だ。

こういう運用の考え方もある。「とりあえず東京(札幌でも名古屋でも大阪でもいい)の都市圏内に落ちればいいや。どうせ日本人どもが死ぬのには変わりない」と考えて発射するのなら、CEPが大きいのも全く問題無いことになるわけで、こうなると適当に威力半径が大きくて製造が簡単な「貧者の核兵器」=化学兵器が有効になる。
なにもサリンだVXだゾマンだのという、最新流行の生産が難しい毒ガスでなくてもいい。人体に対する毒性という点では、水道の消毒に使われる塩素だって立派に毒ガスである。(事実、史上最初の毒ガスは塩素だとされている)平壌市の水道局から徴発したって手に入るのだ。
塩素は化学兵器としては残留性に劣り、拡散しやすいそうだが、市街地への無差別攻撃ならそんなことは欠点にならない。
塩素はマイナス34度Cで液化するので、加圧してやれば容易に常温で液体の状態を維持する。液体塩素は二酸化炭素並に維持が容易なのだ。これを100リットル程度のボンベに詰めて爆破・拡散用の爆薬と作動距離100m~200mの近接信管(=小型レーダー付き起爆装置)を組み合わせれば、立派なノドン用都市攻撃型ガス弾頭の出来上がりである。
マッハ3~4で落下してくる弾頭が上空100mで爆発して100リットルの毒ガスを発散した場合、半径300m位が一時的にでも致死濃度に汚染されるはずだ。
国会議事堂を目標に50発も発射すれば、日本中をパニックにするには充分だろう。さらに名古屋・大阪・福岡・仙台・札幌に20発ずつといったところか…。
CEPが大きすぎるので、三沢・横田・厚木・横須賀・佐世保等の軍事施設は逆に狙わないだろう。
一般市民のみ1万人以上が殺傷されることになる…。

――――――

恐ろしいことを想像するものだが、実際、この方法ならどんなに窮乏していようとも、かの国が日本を戦略攻撃できることになるのである。
それが可能なのなら、そして現状の自衛隊に、先制攻撃以外の対抗手段が無いのなら、外交的な段階での締め付けには、相手に逃げ道を残すやり方を採用するべきだろう。
合衆国の面子に肩入れしている場合ではないのである。
いわんや、単独制裁など、無責任の誹りを免れない、冷静さに欠けた施策だと云わねばならない。
我等が三代目には、もうちょっと冷静かつ柔軟に対応して頂きたいものだ。

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この記事へのコメント
北の問題は、いつも逆の立場になって考えています。
国に資源がない、資金は断たれ、国民にいつまでも優位な
立場でいられるためには・・
武器輸出で外貨を得るには、より強力な兵器の開発に急ぐ
必要がありそうですね。実験をやれば外交カードにも
使えるし。対応としては、そういうことも見越している
んでしょうけど、相手が予定通り行動するとは、最近の情勢を
見ると思えない面もあるような気がして、そこが怖いです。
確実にミサイル持ってますから。
仮にどこかに攻撃すれば、アメリカの反撃の口実になるの
かもしれませんが、問題は、その「どこか」ですよねぇ。
やらないとは、思うんですが・・
Posted by manbow at 2006年10月13日 01:18
まんぼうさん
実際、独裁国家というのは外からは読み切れない部分が多いので、ただの軍需産業強化政策の結果だとは、ちょっと思えない部分が多々ありますね。
ことに今度の核実験、核技術を外資稼ぎに使うためとは思えません。そうするには、核物質とセットでなければ商売にならないと思います。
さて、この核実験、外交カード以外の意図・目的は何でしょう。
たぶん、単純に実践配備可能な核兵器開発ですね。
正直『沈黙の艦隊』が実際に存在したら、なんて思いますよ。
Posted by 壇那院 at 2006年10月13日 21:15
同じく何かされないかと心配です.
一発やったら世界を巻き込んだ戦争にもなりかねないように思います.
あー,今のうちに後悔しないように楽しく生きようっと.
Posted by Ritchie at 2006年10月14日 07:25
あれ?
昨夜、コメント書いたつもりだったのに・・・。
なぜか消えてます。
(もしかして、檀那院さまの検閲に引っかかったとか?)

私も色々考えていて、TBさせていただこうかと思っていて。
でも、今はTBもできないし、リンクも張れない状態なので、いつになるやら・・・。
勝手に同じようなテーマの記事を書いて、TBしないでも、許されてくださいね。
Posted by 吟遊詩人 at 2006年10月14日 12:07
コメントありがとさんです

Ritchieさん
何しろ過去にいたH首相とかS書記長とかF大統領よりキャラが見えない独裁者ですからねぇ。心配です。

お吟さん
いえ、検閲(コメント承認設定)はしてません。ariさんの件からの推測ですが、たぶん、小生が昨夜のエントリの作成画面をあけてる最中だったんでしょう。その間、外からは一時的にblogが消えてしまったように見えるようです。

あ、本文中にリンクを貼る方法は旧システムで、テキスト文での作成だったのなら、同じですよ。(すでに実証済み)
エントリしたら、こっちからTBしときます。
Posted by 壇那院 at 2006年10月14日 15:34
怖いですね。
自分も大都市の近郊に住んでいるので、もし何かあったら、ミサイルで被害を被るかもしれない・・・
そんなとき、自分は親や妹らを守れるだろうかと不安です。
もちろん、北の問題はみんなで考えていかなければならない問題ですが、核でなくとも現実に、ミサイルが飛んでくる脅威はあるのですから、そこのところをよく考えて国は外交をしていってほしいものです。
核を出してきたってことは、おそらく、最後の手段でしょうから・・・
こちらのカードの切り方しだいでは、何が起こってもおかしくないですし・・・
Posted by nyankohime at 2006年10月14日 22:24
nyankoさん
そう、「カードの切り方」とは言い得て妙ですね。
外交てぇやつには心理ゲーム的な要素があるようなので、こっちがどんなカードを持っているのか、判ってるのかも重要でしょう。
三代目、判ってるのかなぁ。
Posted by 壇那院 at 2006年10月15日 01:58
日本人が持っている「核に対するイメージ」が全世界的に多数派か?
と問われれば、おそらく否・・。

米のハリウッド映画でも(だからこそ?)能天気な取り上げ方をされていますね。
「恐ろしい結果」を生み出す兵器だからこそ、
兵器としての魅力が大きいのでしょうね。
その後にどんな結果をもたらそうとしても・・

そんなことは考えたくないのですが、
「理想」だけで固めた平和などと言うものは
実現不可能なのかも知れません。

だからと言って「日本も~」と言う言動こそ危険だと思うのです。
「甘チャン」と呼ばれようとも・・
Posted by tanyan at 2006年10月15日 14:15
tanyanさん

核は、兵器であると同時に凶器です。ただの武器ではないのだ、ということは、確かに世界的には少数派の認識でしょうね。
甘ちゃんでいいじゃないですか。理想家はなべて甘ちゃんですよ。
要は、理想を現実にする力があるかどうかです。
Posted by 壇那院 at 2006年10月15日 23:15
 
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